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悪役の魅力

実に久しぶりにブログを更新するわけだが。

 

日本には俳優の八名信夫がリーダとなっている「悪役商会」と言うグループがある。時代劇や任侠劇、刑事ドラマ等で悪役側の人たちはそれまであまり目立たなかったが、悪役商会の誕生をきっかけにして、それらの作品における悪役を演ずる俳優たちに脚光が浴びるようになった。

 

だけど、僕はまだ二十歳にも満たなかったけど、この悪役商会にはかなり不満だった。悪役のくせに、子供は殺さないとか変なモラル持ってたりとか、殺され方だとか些末なことに拘っていたりしたことなど(出演したバラエティー番組向けに言ってただけかもしれないが)、それ以上に不満だったのは、悪役が主役の引き立て役に過ぎないとでも思われているような世間の雰囲気みたいなものを感じたからだ。

 

その原因は色々な角度から語れるのだろうけども、一因は黒沢明監督の映画にあるような気がしている。世界中から神聖化されるほどの超一級監督で、確かに映画のほとんどは素晴らしいし、異論はない。しかし、黒沢は役者の役作りを認めなかった。黒沢にとって役者は、自分の取る映画の道具の一つに過ぎず、自分の思うとおりにさえ動けばそれでよかったのである。だから出演者たちは黒沢がいいと思うまで何度も演技のやり直しをさせられたし、勝新太郎のように自分のあずかり知らぬところで勝手に役作りなどされては困るから首を斬られたのである。だから黒沢映画に出演した俳優に優秀な役者はいても名優はいない(と勝手に俺は断言するわけだが、乱に出たピーター・池畑慎之介だけは違う、乱はまるでピーターの為に作られたような映画にさえ見えたから)。極端な話、俳優全てが黒沢映画の引き立て役に過ぎなかったとさえいえる。

 

さてそんな映画論をぶってもしかたない。海外に目を転ずると、主にハリウッド映画になるわけだが、悪役が決して主役の引き立て役としてではなく、場合によっては主役陣を食ってしまい、なんというかもう魅せられてしまうほどの悪役が結構しばしば登場する。僕が魅せられた悪役を3人ほど述べよう。

 

  • レオンのゲイリーオールドマン

もう出てきたその時の演技だけでいかれてた。下記動画の1:55あたりから見られる有名なシーンだ。エクスタシー(MDMA)という麻薬のカプセルを上を向いてかりっとやりぶるっと肩を震わせるそのしぐさのいかれっぷり。これだけで、この映画はジャンレノでもナタリーポートマン(※めっさ可愛くて演技も素晴らしいけどね)でもなくゲイリーオールドマンのものになってしまった。凶悪ぶりも凄まじくて、ベートーベンを口ずさみながら皆殺しするという恐ろしさ。

しかしご本人は悪役があまり好きではないそうで、自分に悪役を依頼する人は頭がおかしいと思っていたそうです。でも、こんな演技出来るのはゲイリーオールドマンしかいないと思うんだけどなぁ。この人に後で述べるジョーカーをやらせたら、ヒースレジャーとはまた違った凄味のあるジョーカーになったと思うんだけど。

 

 

今調べるのにウィキペディアみたらもう70歳なのね。つかほんとはルトガーハウアーの悪役としてはヒッチャーっていう映画の役の方が素晴らしいんだけど、記憶が定かではなくて。ともあれ、ブレードランナーでの演技も素晴らしかった。自分の生みの親であるタイレル社社長の頭を両手で掴んで両親指でゆっくりじわーっと目玉を潰していって殺すシーンなんかはあまりにも残忍過ぎて公開時にはカットされたくらいである。不気味さそのものはリドリースコット監督の演出によるところが大きいのではあるけども、ルトガーハウアーの演技力によるところも結構あると思う。それが存分に生かされているのがヒッチャーなんだけどね。残念ながら目つぶしシーンは発見できなかったが、以下のシーンも素晴らしい演技だ。

 

ダークナイトのヒースレジャー

実は最近これを見たので、ブログ更新しようと思っただけなんだけどね。ネットでも語り尽くされてきたけども、ジョーカーの演技はもうほんと神がかってると言う他ないほど素晴らしい。公開を待たずにヒースレジャーは28歳の若さでこの世を去ってしまうのだけど、ほんと惜しい俳優だ。この映画自体ももちろん比類ないほど素晴らしい映画なんだけど、ヒースレジャー演じるジョーカーなくしてこの映画は成立しない。映画に入る前に一カ月間ほどホテルに閉じ籠って役作りしたらしいけど、むしろたった一ヶ月でここまでの役作りできるか?と思えるほどだ。完璧に他の俳優の演技を食いまくってる。とにかくジョーカーの悪っぷりには痺れまくる。もちろん、これを作ったクリストファーノーラン監督の力量もあってのものではあるけども、とにかくこれ以上ないほどにぴったりハマってる。ひひっははっひゃははーっと笑うあの笑い方は一生忘れられないし、それにあの病院爆破時に病院から出てくる時の歩き方やリモコンがうまく作動しないで振って爆破させる滑稽さも一度見たらほんとに強烈に印象に残るものだったなぁ。

 

というわけで、3人ほど紹介してみた。実は日本人も紹介したかったのだけど、僕はそんなに映画とか見てないからだとは思うものの、まったく思いつかなかった。でも多分、上にあげたほどの演技に匹敵するのはいないと思う。映画ではないがあるドラマで竹内力が魅せた演技は悪役としては別格に凄いとその当時思ったのだけど、ドラマのタイトルも覚えてないし、その一話にしか出てないし、あまりにもマイナーすぎて紹介不能。でも竹内力はナニワの帝王のイメージが強いけど、役者として凄い人だと思うよ。

 

例外的には、あの松田優作が挙げられる。遺作となったブラックレインなんだけど、ロバート・デ・ニーロが共演したいと思ったのも頷ける鬼気迫る演技だった。でもちょっと頑張りすぎてる感じがしてね、ハリウッド・海外に進出する気満々だったんだろうなぁ。そういう野心みたいなものがちょっと余計かなと思った。なんていうのかなぁ、もっと凄い映画に出て欲しかったというか、実にもったいない気がするのです。日本に松田優作がかつていたのは奇跡だと思うよ。マジで。